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「月刊百科」の休刊






 「月刊百科」といっても、もう御存知ない方が多いかも知れない。
 平凡社が刊行している月刊誌である。この5月号で、通巻583号。40年以上続いてきた。
 この「月刊百科」が、6月号を最後に休刊になるという。それは、私にとって軽い驚きであった。5月号に「『月刊百科』休刊のお知らせ」として、次のように記されている。

 『月刊百科』は、PR誌として小社の出版活動をご案内し、また時事に即した記事や読書人のための連載をお届けしてまいりましたが、ご高承のごとく近年の日本社会におけるWeb環境の進化は目覚ましく、その中で小誌の役割は終えたものとの判断に至りました。

 出版社のPR誌といえば、岩波書店の「図書」をはじめ、新潮社「波」、講談社「本」や、筑摩書房の「ちくま」、東大出版会の「UP」など数多くある。
 しかし、「月刊百科」は単なるPR誌ではない。ご承知のように、平凡社は百科事典の老舗であり、ある時期までは、家庭の書斎や応接間に麗々しく並べられていた百科事典の最大手であった。百科事典は森羅万象を網羅しているけれど、一度出してしまえばその情報は日々古くなっていく。改訂には途方もない労力がかかるため、すぐに実施できない。そこで平凡社は、毎年『百科年鑑』というものを刊行していた。これは、その1年間の事件事故などの出来事を国内海外にわたってまとめたもので、百科事典と同じ装丁になっていた。
 その毎月版が「月刊百科」である。連載記事もあるが、1か月の出来事を日付順にまとめ、物故者を掲載したページがある。例えば、今月は2011年2月の出来事がまとめられている。2月2日には「林原(はやしばら)が会社更生法適用申請」として、負債総額が1500億円にのぼるなどと記されている。9日には「ウズベキスタンと資源開発で協力」、13日には「JRAで最高馬券」、21日には「トランス脂肪酸の表示指針を公表」など、あらゆるジャンルにわたる。

 私は、こどもの頃から、平凡社の『世界大百科事典』を繙読し、毎年発行される『百科年鑑』を楽しみに待っていた。学生時代からは、黄色い装丁で、気鋭の学者が執筆した『大百科事典』を文字通り座右に置いて愛用してきた。近代史を専攻する私にとっては、日本史事典の類よりも『大百科事典』の方が頼れる味方であった。例えば、「ラジオ」などという項目は、日本史事典には立項されていなかったのである。
 その私も、さすがに近年は百科事典を引くことが少なくなってきた。その一番の理由は、やはり新しい事象が掲載されていないということだろうし、一方で、ローカルな事象の記述が比較的少ないということかも知れない。

 休刊の理由として記されている「近年の日本社会におけるWeb環境の進化」と「月刊百科」の休刊とが、具体的にどう関連するのか、私にはよく分からない。
 しかし、印刷刊行された百科事典の代わりに、インターネット上のウィキペディアが盛んに利用される現在、高い代価を払い、大きなスペースを取って百科事典を書棚に置く必要もないと考える人は多いだろう。
 2010年現在、インターネットの普及率は78%だという。さかのぼって、1995年は0.4%と推定されている。この15年の間に、飛躍的にインターネットが普及した。

 インターネットで知り得る情報がピンポイントの<点>であるのに対し、書物で知り得る情報は<面>的である。百科事典は、書物のなかでも<点>的な傾向があったから、インターネットの浸透に抗えなかったのかも知れない。

 いま、インターネットで<月刊百科 休刊>と検索してみると、皮肉なことに、ほとんどヒットしてこない。いくらネット社会になったといえ、マイナーな情報はその世界には現れないのである。

 「月刊百科」に敬意を表し、ありがとうの言葉を捧げたい。





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