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アベノ界隈(2) ~「赤目四十八瀧心中未遂」~






 昨年、アベノで研修を受けているとき、たまたま「赤目四十八瀧心中未遂」(文春文庫)を読んでいた。車谷長吉の長編小説。映画にもなった。


   赤目四十八瀧心中未遂

 
 「尼ケ崎」のアパートの一室で、独りモツの串刺しをする男、生島。仕事を持ってくる伊賀屋の女主人「セイ子ねえさん」、同じアパートの部屋に出入りする凄味のある男「彫眉」、そして“えらい別嬪さん”の「アヤちゃん」。
 この「温度のない町」と、その町に生きる人びとと、世捨人然として生きる生島とが微妙に交錯しながら、時間は過ぎていく。

 ずっと「尼ケ崎」を中心に進む時間のなかで、アヤちゃんをめぐる事情に絡んで、冒頭から200ページも読み進むに至り、アベノ界隈が登場する。
 電車を乗り継いで、天王寺駅に来た生島。「とどの詰まり私には天王寺駅へ行く以外に、行くところはないのだった。」 生島はそこでアヤちゃんと落ち合う。
 アヤちゃんと生島は、夕飯を食う。

 アヤちゃんは黙ったまま、前を見て歩いていた。私は天王寺駅に降りるのは、はじめてである。毒々しいネオンの光が輝く、繁華な街であるが、どこをどう歩いているのか分からなかった。アヤちゃんは、恐らくはこの世の外へ逃げざるを得ないところまで追い詰められているのだ。その黙って歩いて行く背中が、ネオンの色に染まり、それが次ぎ次ぎに色変りしていた。私の足の裏からは、温い血が沸騰するように、じんじん上って来る。少し小暗い道に曲った。 (「赤目四十八瀧心中未遂」二十二)

 そして一夜が過ぎ、四天王寺、愛染堂、動物園、新世界など、アヤちゃんと生島は経めぐる。

「生島さん。明日最後にここへ行きましょか。」
 振り返ると、壁に赤目四十八瀧の観光ポスターが貼ってあった。森の中に瀧の水が流れており、その前に白い夏帽子を被った男の子が、白い捕虫網を持って、背中向きに立っていた。私も少年時代に捕虫網を持って、野山を駆けめぐったことがあった。私は慄え声で、
「ここ、ええとこや思います。」
 と言うた。  (同上)

 翌日、二人は鶴橋から近鉄に乗って赤目に行くが、生島の思った心中は「未遂」に終わる。

 小説を読みながら私は、毎日天王寺駅構内で立ち喰いそばを食べながら、その作品世界と、灼熱に焼けつく自分とを重ね合わせていた。阿部野橋駅の周辺では、ビル工事が進んでいた。偶然作品に現れたアベノと、目の前にある街は僅かずつ変わりながらも、同様の雰囲気を保っていた。
 いつだったか、私も赤目に行ったことがあった。四十八滝をめぐるうち、大勢の人たちが何やら作業している場面に出くわした。聞くと、「赤目四十八瀧心中未遂」という映画を撮っている、とのことだった。そのとき、私はこの作品をよく知らず、出来た映画も見なかった。

 未読の方には、ぜひ一読されることをお薦めする。





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