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呉に立ち寄る






 広島県へ行った折、時間を見付けて呉(くれ)に立ち寄った。
 呉に来るのは、2003年~2005年頃以来だろう。

 2003年に訪れたときは、新しい施設はまだ建設中だったと思う。最後に行ったときには、もうオープンしていたはずだが、仕事のため訪問できなかった。
 
 その施設は、呉市海事歴史科学館。
 この名称よりも、<大和ミュージアム>という愛称で通っている。

 今回、二つの原爆の日の間に訪れることになった。夏休みのせいか、平日にかかわらず館内は賑わっていた。

 この博物館を有名にした模型。


   大和ミュージアム


 戦艦大和の1/10の模型である。長さは30m近くになる。
 吹抜け空間の上からも見ることができる。

 常設展示室は、最近の歴史展示らしいオーソドックスなスタイルで、パネルや映像を多用したものだった。この写真では、下のガラスケース内に実物資料が陳列されている。


   大和ミュージアム


 <大和ミュージアム>という愛称から、戦艦大和の博物館というイメージがあったが、海軍の拠点として発展してきた呉と海軍施設の歴史を詳しく説いている。そして、呉で建造された艦艇が活動した戦争の歴史を示し、軍艦の模型なども多数そろえられている。最後の一室は、戦後の歴史にスペースを割く。
 大和については、他の艦船とは異なり詳しく紹介されている。呉海軍工廠では133隻の艦艇を建造したそうだが、その技術的な頂点が大和という位置付けだからだろう。

 他に、零戦や特殊潜航艇、人間魚雷「回天」などの大型実物資料も陳列されている。3階には、船のしくみなどが体験的に理解できるフロアもある。


   大和ミュージアム


 <大和ミュージアム>という愛称と、展示のなかみ(まさに海事歴史科学館)とは、ギャップがあるという印象で、館名が来館者に与えるインパクトの大きさを思わずにはいられない。

 
 私が初めて呉を訪れたのは、もう四半世紀前くらいになるだろう。
 驚いたことは、街なかを白いセーラー服を着た水兵さん(もちろん男性)が歩いていたことだ。海上自衛隊の若者だったのだろうが、カルチャーショックを受けた。

 私より80年ほど前に、この街を訪れた作家・田山花袋は、次のような記述を残している。

 
 呉は今、市になつてゐる。頗ぶる盛な市になつてゐる。横須賀などよりもぐつと賑やかで、そして活気に富んでゐる。電車が出来てゐて、それが縦横に市中を走つてゐる。
 私は日露戦役の当時、そこに、宇品から汽船でやつて来たことがある。汽船の甲板の上から見た呉港の活躍--白い黒い煙が一面に颺つて、機械の音が凄じく海に轟きわたつてきこえてゐる。港には、戦地から今帰つて来たばかりの軍艦が幾艘も幾艘もそこに碇泊してゐる。司令官旗などが高く檣頭も揚つてゐる。運送船が港の傍を通つて、そして勇しく出て行くのが見える。その光景は今でも眼の前にちらついてゐる。
 町を通ると、海軍の水兵が其処此処に行つたり来たりしてゐる。号外売が鈴を鳴して凄じい声を立てゝ通つて行つてゐる。丁度マカロフ提督の戦死、広瀬中佐の戦死時分のことなので、人気が立つて、誰の顔にもそはそはしたやうな表情が見えてゐる。号外の声をきくと、血が沸き立つといふやうな気分であつた。其時要塞の砲兵がぞろぞろ町を通つてゐた。国旗が戸毎に風に飜つてゐた……。
 (中略)
 呉の町は通りが広くつて、一寸東京の一市街をそこに移したやうな感じがする。電車は市内の全線を五区に分つて走つてゐる。(中略)区裁判所だの、郡役所だのがある。海軍の鎮守府のある方には、造兵廠、造船所、製銅所などがある。その造兵廠は規模がすこぶる大で、日本第一との称がある。
 軍港は西南に面してゐる。
            (田山花袋『日本一周 中編』博文館、1915年)


 呉が大きな街で活気にあふれていること、水兵や砲兵などが大勢歩いていること、日露戦争の戦勝に「血が沸き立つ」ような雰囲気であることなどが綴られている。

 花袋の時代より随分後だが、呉市の人口は、1940年代には40万人に達した。これは、当時の六大都市に続く都市群に属する規模となる(現在は約24万人)。
 すでに日露戦争の頃に、発展する呉の市勢が花袋の文章からうかがえる。私が出会った水兵たちは、とてものんびりとした街角を歩いていたが、それは戦後の光景というべきものだったのだろう。

 今回は<大和ミュージアム>だけでも駆け足で拝見することになったが、次回呉を訪れるときは、じっくり市内を歩いてみようと思った。





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