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<映画の保存と復元に関するワークショップ>に参加しました






 近代の博物館資料には、さまざまな素材から構成されたモノが存在します。なかでも、その保存が難しいのが映像フィルムです。
 特に“ビネガー・シンドローム”と呼ばれる劣化現象は、資料保存にとって深刻な問題です。ここ数年、それらの問題について学んできましたが、外部の専門家の方々から教わることの連続でした。

 8月27日、28日の両日、京都文化博物館を会場にして、<第六回 映画の保存と復元に関するワークショップ2011>が開催され、私も参加してきました。

 大阪芸術大学の太田米男先生らを中心に、取り組まれているものです。
 参加者は年々増え、今年は全国から100名以上にのぼり、現像所など映画関係の方、大学等の研究者、映画の保存・上映に携わる方、博物館・アーカイブ等の職員などと多彩です。
 
 今年のプログラムは、次の通りでした。

  27日
 *東京国立近代美術館フィルムセンターの取り組み(板倉史明氏=フィルムセンター)
 *映画フィルムの歴史(宮村信吾氏=コダック)
 *映画「長恨」「銀輪」上映
 *リニューアルに際しこれまでの文博のあゆみと2010年度の成果(森脇清隆氏=京都文博)
 *海外の映画保存事情-L.ジェフリー・セルズニック映画保存学校の視点から-(ジョアン・バーナディ氏=ロチェスター大学)
 
  28日
 *東日本大震災に学ぶ:わたしたちにできる映画フィルム救済(中川望氏=映画保存協会、ほか)
 *テレビ映画「古川ロッパの水戸黄門 竜王明神の巻」上映
 *『地獄門』三色分解について(益森利博氏=IMAGICAウエスト)
 *『地獄門』デジタル復元について(石田記理氏=IMAGICA)
 *『地獄門』復元の監修にあたり(森田富士郎氏=撮影監督)
 *映画「地獄門」上映(デジタル復元版)

 なお、29日には、大阪にて実習編が開催されました(私は参加していません)。

 私は、第2回から参加しているので、5年目になるでしょうか。
 例年ハードスケジュールなのですが(笑)、今年は少しゆったりと聴講できた感じでした。
 2日目の「ロッパの水戸黄門」は、半世紀前の作品なのですが、結構おもしろかったですよ!

 さて、初日のJ.バーナディ(J.Bernardi)さんのお話は、米国のジョージ・イーストマン・ハウス国際写真映像博物館の映画保存についてと、イーストマン・ハウスとロチェスター大学との連携についてでした。

 ジョージ・イーストマンは、ご承知のように、コダックの創業者です。ロチェスター大学に寄贈されたその旧邸(イーストマン・ハウス)に博物館が開設され、1989年には増築も行われ、3万本のフィルムなどを収める映像博物館となっているそうです。発火性のあるナイトレートフィルムも上映できるドライデン・シアターも有しています。
 
 ロチェスター大学とイーストマン・ハウスとは、連携して「セルズニック・プログラム」を実施し、2年間で映画保存について学べる養成コースを作っています。
 1年目は、理論を学ぶと同時に、ミュージアム実習やラボ実習などを受けます。その修了にあたっては「実習試験」が行われ、フィルムの受け入れからアーカイブ作業までの手順が正しく行えるかが試されます。
 2年目は、映画史や映画理論などの講義を受けます。

 お話を聞く限り、フィルムの保存や管理に関する実務が学べる専門的コースとして、極めて意義のあるものと感じられました。日本の現状では、理論と実務を融合したプログラムの実践は、なかなか難しいでしょう。

 バーナディさん自身の大学の講義は、Film as Object(物質としてのフィルム)というタイトルだそうです。つまり、映画を作品内容からだけみるのではなく、モノとして理解もするというスタンスです。研究の基礎には、その素材である資料が欠かせませんが、資料を保全するためには、その物質的側面に着目することが不可欠です。とりわけ、映画フィルムのような近代の化学材料からできた資料については、この視点が重要です。

 2日目の午前は、東日本大震災におけるフィルムやビデオの救済についての報告でした。
 NPO法人映画保存協会や東京光音、吉岡映像などが協力して救済に当たられました。
 画像も交えて、フィルムやビデオテープの洗浄作業などの説明を受けたのですが、ビデオテープは予想外に強いようです。
 津波を受けたので塩分を浴びていますが、中和作業などで緩和できることも多いようです。
 詳しくは、ウェブサイト<映画フィルム救済・ご相談窓口>をご参照ください。

 ワークショップの最後の部門は、今年実施された映画「地獄門」(衣笠貞之助監督作品、大映京都、1953年)のデジタル復元についてです。約60年前の退色した映画を蘇えらせる試みです。

 復元前と後を“ビフォー・アフター”的に説明していただきました。復元の主要なポイントである、解像度・明るさ・色などについて、どのように調整されたかがよく理解できました。
 今回の復元の特徴は、退色が少ない三色分解フィルムが保存されていたので、そのフィルムから復元が実施されたことです。三色分解のフィルムは、3本のモノクロフィルムから構成されるのですが、フィルムは経年変化によって収縮していたため、合成の際、色のズレが生じました。それをレジストレーションピンを削って地道に合わせるという作業を通して、きっちり合成できたといいます。そのプロセスも、画像によって説明していただきました。
 復元前と後とを比較すると、赤っぽいフィルムが実に鮮やかな色彩に蘇えりました。
 詳細は、IMAGICAニュースリリースを。

 一番最後は、「大魔神」の撮影などで知られる森田富士郎さんのお話でした。私たち大阪歴史博物館で話していただいたこともありますが、いつもカクシャクとされています。1927年生まれとおっしゃっていました。
 映画の黄金時代に現場を担ってこられた方の話をうかがうと、現在の私たちの営みは先人の努力の積み重ねによって成り立っているということが、よく理解できます。

 今年も勉強になる二日間でした。
 講師の方々、事務局・会場のみなさま、ありがとうございました。 




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Author:なにわ歴博
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