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ずっと、つづける。






 将棋の棋士には、独特の勝負観、人生観、人間観を持っている方が多い。昔、米長邦雄さんの著書を読んでいて、ひとを判断するには靴を見よ、という指摘を読んで驚いたことがある(文字通り、“足元を見る”だ)。

 本屋をぶらついていたら、羽生善治さんの『大局観』(角川oneテーマ21)という新書が出ていた。
 そこに、加藤一二三さんのことが書いてあった。加藤さんは、一度採用した戦法をかたくなに守りつづけて変えない。おまけに、出前の食事も、半年も一年も同じものばかり食べる。
 羽生さんは、同じ戦法は相手に研究されるので損するのではないかと、かつては思っていたそうだ。しかし、最近は見方が変わってきて、同じ戦法を繰り返すことで、その神髄を理解し、深い技術を身につけているのではないかと考えるようになったという。

 加藤一二三さんは、「神武以来の天才」と騒がれて以来、半世紀以上、プロとして将棋を指し続けている。若い羽生さんでも、25年もやっている。プロ競技としては、スポーツなどに比べて、格段に息が長い。

 私たち博物館の世界も、息が長い仕事だ。大阪歴史博物館は、前身の大阪市立博物館として開館した時点から数えて、50年続いている。館蔵品は、優に10万点を超え、未来の人びとに引き継がれていく。また、学芸業務にかかわる知識や技術は厚く蓄積され、博物館運営に対する哲学も長い年月をかけて醸成されてきた。

 いま、大阪歴史博物館は、指定管理者制度によって運営されている。大阪市に選ばれた組織が、館の運営を任されるものだ。2006年度からこの制度が適用され、2010年度(今年度)からは(財)大阪市博物館協会が行っており、期間は4年だ。
 この制度が始まる際、大阪市の認識としていくつかの課題があった。そのひとつに≪事業の継続性は維持できるのか≫というものがある。たとえば、継続的な博物館資料(館蔵品)の管理、中長期的な展覧会計画の策定などだ。

 最近、気にかかっている“継続性”が、学芸員・学芸業務における継続性の問題だ。
 ひとりの学芸員のなかで、専門的な思想・知識・技能を獲得するには、一定の時間が必要だ。大学・大学院を卒業・修了し、学芸員資格を取ったからといって、すぐに“使える”学芸員になれるわけではない。先輩学芸員に教えを請いながら、みずから場数を踏んで、はじめて一人前の学芸員になれる。
 一方、ひとつの博物館でも、学芸業務にかかわる哲学や態度、技術が確立するのは、数世代の学芸員による積み上げが必要だ。印象論的だが、当館では今、第4世代あたりの学芸員が現役で働いている。
 ところが、現役の学芸員の多くが、若くてもアラフォー(40歳前後)となっている。20歳代がいないのはもちろん、もうすぐ30歳代もいなくなる。そして、全員が40歳代になるころ、現在50歳代後半の学芸員が退職を迎え始める。新規採用に関するハードルが高い現状で、この問題を放置しておくと何が起こるのか、言わずもがなだろう。
 ちなみに、この問題は、現在の指定管理者を決める選定委員会で、委員の方からも指摘されている(第3回、2010年1月25日開催)。

 現在、当館の指定管理期間は4年間。全国的にみても、3年から5年という施設がほとんどだ。そうなると、どうしても短期的な成果に目が向きがちになってしまう。長いスパン-10年後、20年後、50年後、100年後-のことを、誰が考えていくのか?
 このことは、どの施設でも問題になっており、仙台市天文台では指定管理期間を30年にしている(平成20年7月~50年3月)。

 71歳になっても現役でありつづける加藤一二三さんは、ひとつの戦法をずっと続けることで、それに磨きをかける。私も、棋士半世紀の加藤さんには及びもつかないが、20年近く学芸員を続けてきた。

 長くやるから、考えられることもある。時間をかけてこそ、身につくものもある。

 なによりも、博物館は歴史という“時間”が生み出す事象に取り組む施設なのだ。その施設の運営に“時間”への配慮が欠けているのは、医者の不養生のようで恥ずかしい。
 



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