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「数」の前に立ち尽くす学芸員(2)






 博物館の運営は、スポーツや芸術の興行・運営と相通ずるものがあります。
 経済が低迷する昨今、順調という団体は少ないのですが、今日考えてみたいのは、収入源の内訳です。

 たとえば、サッカー・J1。クラブの営業収入の内訳をみると、次のようになっています(2008年、クラブ平均。典拠:「週刊東洋経済」2010年5月15日号)。

   広告収入    43%(14.8億円)
   入場料     21%(7億円)
   Jリーグ分配金 9%(3.2億円)
   その他     27%(9.3億円)

 スタジアムの入場料は2割にすぎず、4割あまりが広告収入です。
 欧州の場合は、どうでしょうか。マンチェスター・ユナイテッド(イングランド・プレミアリーグ)の場合、入場料収入が39%、放映権料が36%などとなっています。一方、ユベントス(イタリア・セリエA)の場合、入場料は8%にすぎず、放映権料が65%に上ります(典拠:同上)。日本のプロ野球でもそうですが、一般にプロスポーツは放映権料が大きな収入源になります(巨人の場合、約25%が放映権料という)。
 八百長問題で揺れる大相撲ですが、その過程でNHKの放映権料が1場所あたり5億円程度であることがわかってきました。大相撲の本場所収入は約86億円(年6場所)とされますが、そのうち35%(30億円)が放映権による収入です。これは、マンチェスター・ユナイテッドと同程度の比率ですね。

 スポーツの場合、スタジアムに来るお客さまからの入場料収入だけでは経営は成り立たず、広告や放映権、グッズ販売、ロイヤルティー収入などによって多くの部分を補っています。もっとも、プロ野球のように、多くの球団が親会社から多額の補填を得ないと成立しないケースもあります。


 次に、音楽分野で、オーケストラについてみてみましょう。
 日本のオーケストラの収入源の内訳は、次のようになっています(典拠:大木裕子『オーケストラの経営学』東洋経済新報社、2008年)。

   事業収入  55% 
   行政助成  34%
   民間助成   7%
   その他    4%

 事業収入と助成金が、半々に近くなっています。日本の場合、事業収入の比率が高いそうです。米国は助成金52%、事業収入38%、フランスは助成金81%、事業収入19%です。助成金は、欧米の方が多額なのです。 
 また、『オーケストラの経営学』では、定期演奏会の収支例についても記されています。定期演奏会を1回開くためには、1800万円の経費がかかるといいます。「かなり甘めに見積もって」5000円のチケットが1000枚売れたとして、500万円。1300万円の赤字になります。出演料の高くない指揮者・演奏家にオファーしたとしても、定期演奏会ごとに200万~500万円の赤字が出るのそうです。
 大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)の定期演奏会で試算すると、支出906万円をペイするためには、9000円のチケットを1000枚売る必要があります。しかし、実際のチケットは3500円~5500円なのです(※現在の価格は4000円~6000円)。
 以上のことから、外部からの助成金がなければ、オーケストラの運営はままならないということがわかります。

 では、博物館の場合、どうなのか? 特別展で考えてみましょう。
 必要な経費を(もちろん展覧会により異なりますが)、3000万円だとしましょう。観覧料が1000円だとすると、3万人に来館いただくとペイすることになります。ところが、公立館の場合、無料で観覧いただける方もいらっしゃいます。有料・無料の比率も展覧会ごとに大きく異なりますが、仮に5:5だったとすると、総計6万人の方に来館いただければ支出を回収できることになります。逆にいえば、3万人の方しか来なければ、観覧料は2000円の設定となります。
 これは、あくまでも図式的に、見掛け上の数字でシミュレーションしてみたものです。
 博物館の場合は、プロスポーツのような広告料収入はほぼなく、放映権料は全くありません。グッズ収入なども一般的には僅かです。つまり、収入の大部分を来館者からの観覧料でまかなっている構造です。
 このことが、前回ふれた≪来館者数が気にかかる≫要因のひとつなのです。ユベントスのように、収入の2/3が放映権料だったら、実際に足を運ぶお客さまが少なくたって構わない(あくまでも“経営的”にですが…)。でも、観覧料が収入源のほとんどを占めれば、そこに気を遣わざるを得ない、ということかもしれません。

 これまで、博物館をめぐる「数字」の問題は、美徳ゆえか、あからさまに議論されることは少なかったと思います。しかし本当は、博物館を利用する方も含めて、「数字」について考えていくことが不可欠でしょう。
 
 (この項、つづく)




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